不妊鍼灸による血流向上について

不妊症に対する鍼灸治療の効果はいくつかありますが、その中でも最も重要なものは血液の流れを向上させることです。
鍼灸治療によって可能な血流向上は大きく分けて2つの種類があります。

子宮・卵巣への局所血流向上

1つめは妊娠に直接関連する器官への局所血流の向上です。

妊娠に直接関連する器官とは子宮や卵巣を指しますが、ある特定の経穴(ツボ)にはりをさして刺激を与えることでこれらの局所血流が高まることがわかっています。
卵を育てるホルモンであるFSHや、子宮内膜を着床・妊娠に向けて変化させるE2(エストロゲン)P4(プロゲステロン)といったホルモンは全て血液によって各器官へ運ばれるため、子宮・卵巣の局所血流を高めることは不妊に悩む方にとって非常に重要な治療となります。
ホルモンを運ぶ血液をしっかり各器官に届けることで、卵巣においては卵の質を高く保ったり、閉鎖卵胞の減少による採卵数の増加を促したりすることが可能となります。
また子宮においては着床に適した内膜の状態をつくり、維持することができます。

全身の血流向上

2つめは自律神経調節による全身の血流向上です。

自律神経とは一言でいうと「人間が自分の意思ではコントロールできない身体の機能を、自動的に調節してくれる」働きがあります。
例えば心臓の拍動は自律神経によってコントロールされていますが、心臓を早く動かしたりゆっくり動かしたりといった調節は自分の意思では行えませんよね?
他にも内臓・消化器の働きや、発汗の調節なども自律神経によって自動的にコントロールされています。

そして血管に関しても同じように自律神経がコントロールをしています。
血管を収縮して血液の流れを遅くしたり、血管を拡張して血液の流れを早くしたり・・・
これらがその時の人間の活動に応じて適切にコントロールされていれば問題ないのですが、自律神経の働きが悪くなりバランスを崩すと、本来血流を促すべき時にも血管が拡張しきらず、血液の流れが遅くなったままになってしまいます。
このように自律神経の働きが悪くなると全身の血流に大きく問題が生じてしまいます。

鍼灸には自律神経の働きを整える効果があります。
現代医学の用語では「内因性オピオイド」「体性内臓反射」といった身体の機能を利用することではり治療によって自律神経の働きを整えていくのですが、とても簡単に言うと「身体がリラックスしている状態」をつくっていくことを目標に治療をしていきます。
「身体がリラックスしている状態」の時には血管は拡張して血流が促進されるように自律神経は働きます。
ちなみに同じく「身体がリラックスしている状態」の時は自律神経の働きにより腸のぜん動活動も促進されるため、当院のはり治療を受けているときや受け終わった後にお腹が鳴る方が多くいらっしゃいます。
それは自律神経の働きが整っているという一つの指標になります。

全身の血流を向上することは、先ほど1つめで挙げた子宮・卵巣への血流アップにももちろん関係しますし、身体の冷えや血流悪化による様々な不定愁訴の改善にも繋がります。
この冷えや不定愁訴によって生じるストレスは妊娠に必要なホルモン分泌や卵巣機能へ悪影響を及ぼすため、これらを改善することも妊娠に向けてとても重要な治療となります。