新型コロナウイルスワクチンの不妊治療への影響について

新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、妊活をされている年齢層の一般の方への接種可能時期も迫ってきました。
「不妊治療中にワクチンを接種しても大丈夫なのか・・・」
「ワクチンを接種すると不妊症になると聞いた・・・」

というような不安をお抱えの方もいらっしゃることと思います。

新型コロナウイルスワクチンは通常のワクチンよりもかなり短期間による開発がなされ接種が始まったものであるため、長期的な安全性に関しては判明していないことが多いのが実情です。
そのため、現時点では「絶対に安全」とも「絶対に危険」とも断定はできません。

ですが、現在日本・世界でどのような発表や認識がされているかをお知らせすることは可能です。
以下各団体の見解を一部抜粋しご紹介します。

【厚生労働省の見解】
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.htmlから一部抜粋

妊娠を計画中の方については、接種後の長期避妊は必要ありませんが、可能ならば妊娠前に接種を受けるようにし、器官形成期である妊娠12週までは、偶発的な胎児異常の発生との識別に混乱を招く恐れがあるため、接種を避けていただくこととしています。

現在、ファイザー社等は妊婦を対象とした新型コロナワクチンの臨床試験を海外で実施しています。
また米国では妊娠中・授乳中・妊娠を計画中の方について、下記のような見解やエビデンスが示されています。

妊娠中の方:
米国では、既に10万人以上の妊婦が新型コロナワクチンを接種しています(2021年5月3日時点)。
妊娠中にmRNAワクチン接種をした約3万5千人の女性の追跡研究の報告では、発熱や倦怠感などの副反応の頻度は非妊娠女性と同程度であり、胎児や出産への影響は認められませんでした。
妊婦中の女性に対するmRNAワクチンの安全性や有効性に関するランダム化比較試験も現在行われています。
米国CDCは、妊婦にも接種の機会が与えられるべきだとしております。
これは、妊婦は同世代の妊娠していない女性と比べて、新型コロナウイルスに感染した場合に重症になりやすく、また早産や妊娠合併症、胎児への悪影響のリスクが上がることが主な理由です。
妊娠中にmRNAワクチンを受けた方の臍帯血(胎児の血液と同じ)や母乳を調べた研究では、臍帯血にも母乳中にも新型コロナウイルスに対する抗体があることが確認されています。
こうした抗体が、産後の新生児を感染から守る効果があることが期待されています。

妊娠を計画している方:
これから妊娠を計画されている方もmRNAワクチンを接種できます。
mRNAワクチンが生殖器に悪影響を及ぼす報告はなく、ワクチンのために妊娠のタイミングを変更する必要はありません。
もし接種後に妊娠していたことがわかった場合も、ワクチン接種が妊娠に悪影響を及ぼすという報告はありません。

【日本生殖医学会の見解】
http://www.jsrm.or.jp/announce/covid19_archive.htmlから一部抜粋

・妊娠の予定がある、現在妊娠中である、または授乳中である者にワクチン接種を差し控えさせることを、タスクフォースは推奨しません。

 ・不妊治療を受けている者や妊婦は、適正基準に従ってワクチン接種を推奨されるべきです。ワクチンは生きたウイルスではないため、ワクチンを投与したからといって妊娠の試みを延期する理由はなく、また、2回目の接種が完了するまで不妊治療を見合わせる理由もありません。

 ・新型コロナウイルスmRNAワクチンは生きたウイルスを含まないため、不妊、妊娠前期または中期の流産、死産、そして先天異常のリスクを高めることはないと考えられています。

・新型コロナウイルスワクチン接種後に発熱が見られる人も中には見られるものの(接種された人の最大16%、大半が2回目の接種後)、妊娠中または妊娠を望んでいる者にワクチンを接種するかどうかの判断をする際には、発熱のリスクを懸念材料とみなすべきではありません。

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現時点では妊娠後12週目までの接種を避けていただくよう厚労省の見解がある以外に特別な制限等はありません。
ワクチン接種のメリットは大きく、接種をしたからといって治療を停止しないといけないということはありません。

また、一部インターネット上などでワクチン接種によって不妊症になるというような噂がでていますが、現時点でその噂には一切医学的根拠はありません。

今後の発表にも注視しながらワクチン接種の判断の材料としていただければ幸いです。